
「最近、物忘れが気になる」—— 受診すべきサインと、最初の一歩
「親の物忘れが増えた気がする」「自分でも少し不安になってきた」——こうした気づきは、実は 認知症の診療を始める最も大切なきっかけ です。認知症は種類や進行度によって治療方針が大きく異なり、早期に診断することで取れる選択肢が広がる疾患 でもあります。この記事では、受診のタイミングと、最初の一歩の進め方をご紹介します。
「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違い
歳を重ねれば、誰でも名前が出てこない、置き忘れが増える、といった経験をします。これ自体は自然な変化ですが、以下のような特徴があるときは、加齢だけでは説明しづらい物忘れの可能性があります。
- 体験そのものを忘れる:昨日の出来事を「そんなことあったかな」と、丸ごと忘れてしまう
- 同じ質問を何度も繰り返す:1時間前に答えたことを、また同じように聞いてくる
- 場所・日時の見当識が薄れる:今日が何月何日か、今いる場所がどこか、分かりにくくなる
- 性格や行動が変わる:怒りっぽくなった、趣味をしなくなった、身だしなみを気にしなくなった
- 家事や金銭管理に支障:料理の手順を間違える、通帳管理が難しくなる、買い物で同じものを何度も買う
加齢による物忘れは「ヒント(昨日のお昼は何を食べた?)を出せば思い出せる」ことが多いのに対し、認知症では「ヒントがあっても思い出せない」「食べた事実そのものを忘れる」違いがあります。
認知症は「種類」によって治療が変わる
認知症と一口に言っても、実際には複数の種類があり、それぞれ治療方針が異なります。
- アルツハイマー型認知症:最も多い。記憶障害が中心。近年は抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ・ドナネマブ)が登場し、早期段階での治療選択肢が広がった
- レビー小体型認知症:幻視・パーキンソン症状・認知機能の変動が特徴。薬の選び方に注意が必要
- 血管性認知症:脳梗塞・脳出血の後に起こる。再発予防と生活習慣病管理が鍵
- 前頭側頭型認知症:性格・行動の変化が目立つ。初期は認知症と気づかれにくい
- 治療可能な認知症(Treatable dementia):甲状腺機能低下、ビタミンB12欠乏、正常圧水頭症など。早く見つかれば治るタイプも存在する
特に「治療可能な認知症」は見逃したくないため、まずは診察・採血・画像検査で種類を見極めることが出発点 となります。
受診を検討するタイミング:チェックリスト
ひとつでも当てはまれば、受診のご検討を
- 同じ話・同じ質問を何度も繰り返すようになった
- 約束や予定を忘れるようになった
- お金の管理・銀行手続きが難しくなってきた
- 料理の味付け・段取りが変わった
- 場所や日時の感覚があやふやになる時がある
- 家族の名前・顔が出てこない瞬間がある
- 怒りっぽくなった/意欲がなくなった/外出を嫌がるようになった
- 運転中のヒヤリハットが増えてきた
特に急ぐケース:数週間〜数ヶ月単位で急に症状が進んでいる/物忘れ以外に歩行障害・失禁・幻視などがある場合は、治療可能な認知症や他の神経疾患の可能性があります。早めにご相談ください。
ご本人が受診を嫌がるときは、ご家族だけでも
認知症の受診で最も多いご相談が「本人が受診を嫌がる」「自分は大丈夫だと言い張る」というものです。この場合、ご家族だけでご相談いただいても構いません。当院では、ご家族からの聞き取りだけでも、次の一歩の進め方を一緒に考えていきます。
「健康診断のついで」「血圧の薬をもらいに来るついで」など、ご本人が抵抗感なく来院できる切り口を、ご家族と一緒に工夫することも可能です。
当院での診療の流れ
毎週金曜日の脳神経内科外来(予約不要)で、認知症の診療を行っています。初診時には以下を組み合わせて総合的に評価します。
- 問診:ご本人・ご家族からの聞き取り(生活状況、服用薬、経過)
- 認知機能検査:HDS-R、MMSE、MoCA-J など(15〜30分程度)
- 血液検査:貧血、甲状腺、ビタミン、肝腎機能などのスクリーニング
- 画像検査:院内CT、必要に応じて連携医療機関でMRI
結果を総合して、認知症のタイプを見極め、治療方針と生活サポートを一緒に考えます。介護保険の申請や、地域包括支援センターとの連携もご案内可能です。
まとめ
認知症は「気づきから診断まで」が長くなりがちな疾患ですが、早期に受診するほど選択肢が広がる ことが分かっています。迷ったら、まずはご家族だけでも構いません。愛媛県東温市の池川内科・神経内科では、脳神経内科専門医が、ご家族のお気持ちに寄り添いながら診療を進めます。